せとかわデニム語り#2「いつか地元のデニムで何かしたくて」井原からプロジェクト参加中のなつきさん・なつみさん

いよいよ2020年がスタート!せとかわデニムプロジェクトも、春の商品発売に向けていよいよ大詰めになってきました。

ここから発売までのあいだは、このプロジェクトを進めてきたメンバーひとりひとりの言葉や活動をご紹介していきたいと思います。


きょうの語り手は、なつきさんとなつみさん。


同じ井原に住む2人は、プロジェクトの企画商品の制作を、メンバーの中心になって進めてくださっています。児島のEVERY DENIMさん・福山の篠原テキスタイルさんにも定期的に通いながら、デザイン、素材選び、生産スケジュールの管理など、様々なことをしてくださってるおふたり。どんな風にプロジェクトに取り組んでいるのでしょうか?


おふたりと一緒に日々児島や福山に通った、瀬戸内かわいい部運営メンバー・よしこさんが聞き手となって、おはなしをうかがいました。


プロフィール

なつき
兵庫県神戸市出身、岡山県井原市在住。インポートブティックで販売員をした後、芸術家のアトリエでペイントスタッフや、新規プロジェクト立ち上げに携わる。現在はグラフィックデザインの仕事をしながら、廃材でアート作品を作っている。1児の母。


なつみ

宮城県出身、岡山県井原市在住。手芸作家・占い師・カウンセラーの顔を持つ。6歳・4歳の2児の母。


よしこ

きょうの聞き手。瀬戸内かわいい部の運営メンバー。岡山県出身、矢掛町在住。「SNS=人と人とを繋いでくれるツール」という思いのもと、Instagramを中心に岡山や瀬戸内の情報を発信中。人と出会い絆を深めながら「瀬戸内のかわいい」を伝えるため、日々新しい場所へ飛び込んでいっている。



プロジェクト参加のきっかけは「いつか地元のデニムで何かしたい!」という思い


-今日はよろしくお願いします! まず最初に、おふたりがこのプロジェクトに参加することになったきっかけを教えていただけますか? それじゃあまずはなつきさんから!

なつき:このプロジェクトを知ったのは、よしこさんのInstagramがきっかけです。いま私は岡山県井原市(井原もまたデニムの名産地)に住んでいるのですが、ずっと「井原のデニムと何かしたい!!」という思いを持っていて、そんなときにこのプロジェクトのメンバー募集記事と出会いました。


「このプロジェクトで、製品ができる過程を体験してみて、”自分でも何かできるかも”という感触を得られたら、自分のまちである井原でも何かやってみよう!」と思い参加を決めました。


なつみさんとは実は同じ井原に住むご近所同士なのですが、彼女も私と似たような思いを持っていたので、すぐなつみさんにも「こんな企画があるよ!」とお誘いして。そのときがなんともう締切2日前だったので、滑り込みで参加することになりました。

なつみ:私も、なつきさんと同じように「井原のデニムを何かのかたちで発信できたらいいな」と思っていました。でも具体的にどうしたらいいかわからず…。そんなときに、なつきさんから「いい企画がありますよ!」と聞いて、すぐ「面白そう、じゃあやってみよう!」と決めました。


製品づくりを経験できるのも魅力だったし、こういう企画って1人2人でなかなかできることではないじゃないですか。私自身、なにかをゼロから立ち上げるタイプじゃなかったから、(チームで企画を進める)デニプロはうってつけかもと思って申し込みました。


-おふたりは、県外から井原に移住されてきたんですよね。移住してから「井原で何かやりたい!」と思うまでに、何かきっかけはあったんですか?


なつき:そうですね…町中あちこちにミシンを踏む人の姿がある、そんな環境もきっかけかもしれません。「○○被服」って看板もたくさんあって。

なつき:でも、そこに入りたくても私はミシン経験者でもない。うちの家も染料工場を営んでるけれど、生地は作ってないから「取引先と何か新しいものを作ろう!」と思ってもなかなか進めにくい。「おもしろそうなものが周りにあるのに、何もできない」というもどかしさがありました。


なつみ:私は井原にお嫁に来たあと生活に慣れるまで3年ぐらいかかったのですが、ちょうどその頃なつきさんが近くに引っ越して来たんです。夫に「一度あってみたら?」と教えてもらって出会うことになったのですが、私も彼女もものづくりに関わることをしてきたから話が合ったし、彼女のクリエティブな経験や話がまた面白くて。


「井原はおもしろいところ。ちょっと昔なら、都会じゃないとなかなか新しいことをはじめにくかったけど、今の時代はどこにいても新しいことができる。だったら、井原でもなにかできたらいいな」と思っていました。


-誰もが発信できる今の時代だからこそ、きっとできることってありますよね!

アイデアを"カタチ"にする役割を担当して〜ピクニックシートのデザインや素材選び〜

-おふたりは、篠原テキスタイルさんの工場に通いながら、デニムの素材選びや商品デザインを中心となって進めてくださっているわけですが、今どんなことをされてるか、改めて教えていただいてもいいですか?


なつき:はい。商品に使う生地のピックアップに伺ったり、商品の仕上がりサンプルを篠原さんにもお見せして、風合やデザインを確認してもらいながら、プロのご意見を聞かせてもらったりしています。


今回のプロジェクトで使用する生地は、生産の過程で出たB反(ちいさな傷やほつれがあるゆえに市場には出せない生地)なのですが、それを篠原テキスタイルの工場に保管しておいてもらって、その中から篠原さんの意見をもとに選んでいます。白、黒、濃紺、それからストレッチデニム...いろんなデニムや素材をみせていただいて、ピクニックシートに合いそうなものを一緒に決めさせていただきました。


今度もサンプル第2弾用の生地を何種類かいただきにいく予定です。

-あるとき、B反以外の廃材も手に帰ってこられたこともありましたよね。


なつき:そうそう。帰り際に倉庫の隅になにか見えて思わず「ちょっと待ってください!」ってなって…(笑)山積みのダンボールの中に、生地の「耳」の部分を切り落とした白いふわふわがたくさん詰まってたんです。廃棄されるはずのものだったのですが、すごく可愛かったから「1箱もらってもいいですか?」と聞いたら、篠原さんは「え…本当に持って帰るの…?」と、信じられないって顔をしてました(笑)


なつみ:ほかにも藍色の縦糸の束もあって、それもフリンジみたいで「すごくきれい!何かに使えそう」って感じました。なつきさんが見つけた白いふわふわは、クリスマスツリーにかけたりしてもかわいいかもしれませんね。


-普段から手芸やものづくりをしているふたりだからこその目線ですね。

-ピクニックシートのデザインや仕様書づくりも、おふたりが担当してくださってるんですよね。


なつみ:はい。もともとわたしは手芸が好きでものづくりをよくしていたので、その経験をいかしてデザイン画を描かせてもらいました。


それをもとに、お仕事で商品企画や生産発注の経験があるなつきさんから生産者の方に渡す「仕様書」で書くべきポイントを教えてもらってブラッシュアップしました。だから、あれはふたりの合作ですね。


なつき:いまは、11月のイベントの時に作ったサンプル第1弾をもとにさらにデザインを再検討してるところです。

篠原テキスタイルさんとのやりとりを経て感じること

-

篠原テキスタイルさんに定期的に通われる中で、感じたことなどはありますか?


なつき:まず「お金にならない企画に、本当によく付き合ってくださるなあ」と思いました。

ミーティングに行くと気になるデニム商品や素材があって、ついつい話し込んでしまうのですが、そんなとき「東京で仕事してたときは”○時〜○時まで”と時間がはっきり決まってたし、世間話をすることもあんまりなかった…でも、ここではそういうことも可能なんだ」と思い、それっていいところだなと感じます。

なつみ:篠原テキスタイルの篠原由起さんっていう「人」が本当によかったなあと思います。経験者でもないわたしたちの企画や思いに興味を持って聞いて、いっしょに企画を進めてくれる優しさや人柄が素敵で。本当に良かったなと思います。


-きっと篠原さんだからこそ、「こんな素材もあるよ」と私たちの知らない知識をみずから教えてくださるんですよね。


なつみ:うかがうたびに、本当にいろんな素材の情報をいただいてます。今回のピクニックシートの持ち手の部分で使っている「セルビッチテープ」の存在を最初に教えてくださったのも篠原さんです。

*セルビッチテープ:ニードル織機で織り上げる特殊生地。地はインディゴロープ染色、テープの耳部分にセルビッチデニムと同じ、柄を表現した特殊な素材https://tsudasangyou.com/140.html


なつみ:篠原さんみたいな協力的な方がいて、知識を惜しみなく教えてくれる…そういう風に恵まれてるからこそ、このプロジェクトが成り立ってるんでしょうね。


なつみ:「シェア」ということへの意識が高い方ですよね。

普通ならノウハウ料・監修料をもらってもいいことを惜しみなくシェアしてくださる。だからこそ、教えていただいたことを今回のプロジェクトで世の中に広めて、最終的に篠原テキスタイルさんに循環していく結果になればいいなと思います。

情報を惜しむんじゃなくて、発信して広めて、いい循環を作っていく。そういう人ですね。篠原さんという方は。「みんなで良くなろう」って考え方の方。


なつき:そうじゃないと、文化は広まっていかないですよね。


ピクニックシートのこだわり仕様は?まわりの反応は?

なつき:この前、このデニムのピクニックシートを持ってこどもと公園に行ったんです。そうしたら「これ何ですか?本物のデニムですよね?」と声をかけてくれる人もいて、人の目を引く存在感があるなって感じました。

そのあとも、いつのまにかよその子が嬉しそうに座っていたり…(笑)肌触りもいいから、ついつい座りたくなっちゃったみたいです。


-プロジェクトの企画商品はピクニックシートでいこう!と決めた時の「デニムのピクニックシートを広げたとき、そこが人と人のつながりを生む場になればいいね」という話が現実になってきてる感じがします。

なつき:実際に広げて使って見た写真は、SNSでの反応もすごくいいですよね!もっと撮りたい!このときも、デニムの上に紅葉が落ちた時の、色の相性がすごくよくって。

カラフルなものとすごくよく合いますね、ひきしまるというか。あと、ベージュのコーデュロイパンツを履いて座った時もかわいかった。他にもノルディックな柄とも合うと思います!


-それってきっと素材がデニムだからですよね。どんな素材にも合う万能さというか。


なつき:あと、ピクニックといったら靴を脱ぐシーンが多いから、ピクニックシートにあう靴下とかを作ってマルシェで一緒に売ってもおもしろいかも。寒い時期には、シートの上で靴をぬいだあとに履ける毛糸の靴下とか…そういうコーディネートも楽しそう。ああ、いろんなもの作りたくなっちゃう(笑)

-それから、今回の注目ポイントは、水や汚れをはじく「テフロン加工」ですよね!

なつき:テフロンといえばフライパンに施されてる加工だけど、それが布にも使えるっていうのが本当にすごいですよね。水をはじくあの様子がマジックみたいで、11月のイベントのときも「水の球が動く!」と驚きの声があがりましたよね。


それに、通常の撥水加工だと少しずつ効果が薄くなって言ってしまうけれど、テフロン加工は乾燥機やアイロンで熱を与えてあげると効果がよみがえるというのがすごいところだと思います。


-屋外で太陽の下に広げた時はどうですか?加工前と生地感に変化はあるんでしょうか?


なつき:光を反射しててかったりすることもなく、デニムの生地感がそのまま生きていきました。生地の質感もやわらかさもそのままです!



プロジェクトと、仕事や家庭との両立


-おふたりは小さなお子さんを持つお母さんでもあるのですが、ご家族やお仕事を持ちながらこのプロジェクトに参加していて、何か感じることや「ここは大変だな」と思うことってありますか?


なつみ:うーん…そうですね。私は個人で仕事をしているのですが、仕事との両立っていう点では、感じることがあるかな。(会社に)おつとめしてたら、ここまで自由に篠原さんのところに行けなかったよなとか。


あと、今プロジェクトでやっていることのボリュームとしては、仕様書を作るまでは少し大変だったかも。でも「プロジェクト」としてやってる以上、がっと集中して取り組む時間は必ず出てくるものだと思うので。


なつき:わたしもいっしょかな。何かするんだったら、プレイヤーじゃないと面白くない。「やるからにはやりたい」と思ってる。だからこの前のイベント前後も、大変だけど楽しかったです。


私もなつみさんと同じで、個人で仕事をしてるから、そっちを終わらせてからプロジェクトのことを進めてるので、ついつい後回しになっちゃうんだけど、でも「焦らずやればいいか」と思ってます(笑)


なつみ:でも、困ったとき、無理なときは、ちゃんと言うことは意識しています。この3人の間でもそうしてて、誰かができなくっても、ほかの誰かにお願いして、分担するようにしていました。

なつみ:それから、メンバーがたくさんいていろんな地域に散らばってるのもよかったなと思います。これがもし、瀬戸内だけ・関東だけだったら、活動の幅がまた違ったと思うんですよね。色々なスキルを持って、色々な地域で暮らしてるメンバーがいるからこそ、できることの幅も発信の幅も広がってる気がします。


なつみ:そうだね。

あと、やりたいことがあっても、その過程に苦手なことがあるから挑戦に踏み切れないことってあると思う。けど、このプロジェクトでは、いろんな人がいて、それぞれ得意なとこを分担できてるから、楽しんで動けてる気がする。それが今のコミュニティの良さでもあるかな。


なつき:あとね。旦那がこのまえのイベント(せとかわ meets the デニム)にきてくれて。

それまでは「お金にならないことにどうしてそこまで力を注いでるの?」なんて言われることもあったのだけど、いざ来てみると「お給料が出るわけではない事に、ここまで情熱を持って取り組んでる人がいて、しかもそれに賛同してくれて集まってくれる人がこんなにいる。いいコミュニティに入ったね」と言ってくれるようになったんです。


なつみ:たしかにけしてお金にはならないけど、もしかしたらこれが新しい関係や活動につながるかもしれない。そんな「種まき」の場所になってる気がします。生産者のみなさんにとっても、私たちにとっても。

-すてきなエピソードをありがとうございます。さて、そろそろインタビューの終わりの時間が近づいてきたのですが、最後に、このプロジェクトが終わったあとやりたいことや、夢などがあったら教えていただけますか?


なつき:主人とずっと言ってる夢なのですが、今暮らしてる家をコミュニティスペースにしたいと思っています。この気持ちを共有できる人が最近どんどん増えてきたので、その人たちを一堂にあつめて交流できる場所にしたいんです。そこで、テイクフリーのフリマとか、本の紹介をしあう会とか、お金にかえられないものを交換しあったり…そういうことをできたらなと思っています。20年くらい先の夢ですが(笑)


なつみ:私も、なつきさんの考えに似ていて、井原に人が足を運んでくれるような拠点を作りたいです。井原って交通アクセス的にどこかへ向かう通り道ではないから、だからこそ「井原に行きたい」と思ってわざわざ人が来てくれるような場所が欲しくって。それが、長期的にやっていきたいことですね。


-では最後に、この記事を読んでくださった方や他のメンバーにむけて一言お願いします!


なつき:メンバーの皆さんこれからもみんなで楽しくワイワイやってきましょう!


なつみ:瀬戸内に来たことがない方は、ぜひ来年の春ピクニックに来て楽しんでください!来てみないと、やっぱりいいところってわからない!わたしも東北出身だったので、瀬戸内って海外と同じくらい知らない場所でしたが、本当にいいところです。来てみて体感してください!

ふたりが中心になって作ったデニムのピクニックシートは、もうまもなく発売開始!


デザインもブラッシュアップし、生地のバリエーションも増やして、3種類のシートを発売します!(ほかにも数量限定のバリエーションも…?)発売情報は、SNSやこちらのHPで発表しますので楽しみにおまちください!


また、より多くの方に瀬戸内やデニムの魅力をお伝えし、「瀬戸内ってかわいい」の輪を広げていくことをめざして、プロジェクトメンバー以外のみなさんのお力もお借りした「#瀬戸内デニムピクニックハッシュタグキャンペーン」を行なっております。 こちらもぜひチェックしてみてください!


Photo by Helen Suzuki, Natsuki, Natsumi, Yasuka Umezaki, Yoshiko Senoh, Yuko Minami

聞き手:よしこ

書き手:みなみ


▼なつきさん・なつみさんたち、プロジェクトメンバーの思いを綴った活動日誌はこちら

https://note.com/setokawadenim

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